lesson5:背徳の味(6)
「あっ、あ……だめ、そこ、は……」
「知っていますよ。いずみさんがここが好きな事を」
中にぐっと入れられ、親指で突起を揺する彼は本当に意地悪で、でも私の欲求を各自に満たしていく。拓也はくれない。この人は、私の欲しいものを全てくれる……
「じっとしてて……」
T字のカミソリを持って、彼は私の陰毛の生え際、恥骨に当てる。じょり、という音に震撼する。
「綺麗です、とても」
褒め言葉を夢の様に聞きながら、その行為を見つめる。徐々に毛が無くなっていく……鼠径の間まで拡げ、あの場所の襞まで拡げる。彼は慣れた手つきで私の毛を全て無くしてしまった。それから、そこにシャワーのお湯を掛けた。
何も無くなった私のそこは、せり出た突起が卑猥に主張していた。
「これで、舐めやすいですよ、とっても……ああ、貴女のここがしゃぶりたかった。貴女のこの場所を想像して、僕は何度も何度も。夢みたいですよ」
舌をそこに絡めるように、キスをする。唇でねぶられて、舌で突起を転がされ。更には中指を膣へと侵入させる。
「ああ、あぁ~っ……いいっ、すごい……」
こんなに気持ちの良いことが、今まであったろうか。そう思う位、成宮の舌は媚薬のようだった。癖になる、こんなに気持ちが良かったらもう離れられない。すぐに絶頂したくて、私は腰が動いていくのが分かる。恥ずかしい。でもどうしようもできない……
「ほら、全部丸見えです。隠せないですよ、もう。僕に全て見られているのですから」
「あっ、いきたい、いきたいっ……なる……みや、さあん」
溜まりに溜まっていた不満と、性欲とが絡み合って複雑な快感になるのがわかる。この人に、奥まで知られたい。奥まで犯されたい。後ろでは無く、膣を……
「入れてっ、入れて欲しいっ」
「だめです。そんなにお強請りしては、はしたないですよ。我慢なさい。僕に愛液を飲ませて……」
じゅるっ、じゅっ、と吸う音が風呂場にこだまする。どうしよう。これではアパートの外に聞こえてしまっているかもしれない。それでも、止まらない。声を抑えられないほど、興奮している……
「口を塞ぎなさい。いくときの声を聞かれてはいけませんよ。それと、僕の名前も」
命令されると、更に興奮が高まる。もっと、支配して欲しい、心の底から心酔させて欲しい。拓也の事なんて、考えなくてもいいように。今日の事も、忘れたい。どうか、成宮さん……
「ほら、こんなに尖って……いきたくて仕方ないんですね」
こくこくと頷き、声を出さないようにする。そのまま彼の頭をそっと撫でる。意外と硬い髪の毛。拓也のくせっ毛とは全く違う……
舌がその三角の頂点を行ったり来たりするので、私は仰け反ってその快感を貪る。こんなに気持ちの良い事が世の中にあるのか。不思議でしょうがない。同じ事をされても、今までこんなに感じたことはないからだった。
「声をがまんしているので、ご褒美をあげましょう」
成宮がそういうと、指が膣(そこ)に入っていく。二本とも、ゆっくりと、ねじ込まれるように入っていくのが溜まらなく気持ちいい。言葉を失い、私は快感に咽ぶ。
「~っ、……ふっ……」
「そうそう、お利口さんですね。そのまま、黙っていなさい」
ぴちゃ、と唇が甘くそこを噛む。かと思うと、次は本の少し、歯を立てる。予想できない彼の技術が、私の心を最大限に喜ばせる。いつ行ってもおかしくない。私は、あとは彼の命令を待つばかりだった。
「まだ、まだ……我慢しなさい。もっと。気持ちいいですね、いずみさん……可愛い人……」
「ふっ、うう、ふっ……」
そろそろ我慢も限界になってきている。でも、彼の命令で、彼の合図でいきたい。それが最も快感を増幅させるのを私は知っている。早く、その言葉を頂戴。おねがい……
「噛まれるのが好きなんて悪い人だ。毛が無いからよく噛めますよ。ほら……」
彼の前歯の、少し尖った部分が、突起の根元に当たって酷く感じてしまう。ぶしゅ、と勢いよく何かが飛び出してきて、成宮の顔にかかる。
「あ……」
「嬉しいですよ、これが欲しかった。飲ませて下さい、さあ」
成宮は唇をそこにぴったりとくっつけると、吸い付くようにそこを包む。漏れ出た何かを、ごくっ、ごくっ、と飲んでいるのが分かった。
「いや、嫌……」
一通り飲み干して、成宮は口を拳で拭う。彼のそこは、最大限に大きくなっているのが分かる。このまえ、私が咥えた時のそれと、同じくらい、いや、それ以上……
「入れては、くれないのですか」
「……」
成宮が一瞬迷ったのを、私は見逃さなかった。彼も、迷っている……私と、同じように?
「駄目です。今日は……僕の舌で」
目隠しをしていないので、今日は彼の気持ちが分かる気がする。彼も揺らぎながら、私を犯している……のかもしれない。それは、背徳の結果なのか、慕情なのか。分からない、分からないのだけれど……
後ろと前とに、指が差し込まれていく。私は我慢が出来ずに、声を漏らす。
「うっ、うう……それ、をっ、されたらっ、もう」
「さあ、そろそろ……」
中でぶつかっている指と指。さらにはまた、突起を舌で転がされる。我慢ができない気持ちを、彼は分かっている 私の心が、読まれている。そしてそれが心地よかった。
「ああっ、ああ、もう、もう」
「いきなさい。さあ、最大に感じて……」
その瞬間、私は自分がどうなっていたか理解出来なかった。
雷に打たれる時は、きっとこうなのではないか。そう思ってしまうほど、強い電流のような衝撃……それから、身体が跳ね上がる程の、制御できない感覚。強制的にいかされる、その典型的な気持ちよさ。全て、絡み合って混ざり合って、その快感の中、彼がゆっくりと私を押さえ込む……快感から逃げられないように。
「ふうっ、ふうっ……ああ、ああ……」
快感の終わりにガクガクと震え、身体を制御できない私を、そっと抱きしめる彼。いきり立ったそこからは、透明な液体が垂れていた。
「……」
何も言わず抱きしめられる。
どうして、私を抱かないのか。
前のように、私の後ろを犯せばいい、なのにそれをしない成宮がなにを考えているのか、分からない。
でも抱きしめられて、彼が酷く寂しい事だけは、分かる。
「成宮、さん……」
成宮はその後何も言わなかった。浴槽に温まって、二人で笑うことも無く、最後の別れの瞬間に触れるようなキス。私は彼に送るのを断られ、そのまま自宅のベッドで眠りについた。
……切ない。こんな気持ちは初めて味わう。この気持ちに名前があるのか、全くわからないけれど、私は痛みにも似た感情を、恋なのではと思い込んだ。
成宮と離れると一人。
自分が一人だと、感じる事が多い。
拓也では味わえなかったこの気持ちは、胸の中に巣くうように、主張していく。
寂しさも、背徳も全て、彼の策略なのだろうか。
それとも、私だけの感情……?
計算では無く、|成宮《あの人》を、私は……
胸の痛みを隠すように。その場所を慰める。
彼の舌を思い出して、夜な夜な彼に、犯されることを夢見るのだった。