lesson2:縄の痕(7)

「いいですね、いずみさん……とてもいいです。徐々に動けなくなっていくのが興奮します」
 左手足の次は、右手足。ある程度からだが柔らかいので縛られても平気だが、幾分窮屈ではある。しかも、やはり足は大きく開かれてしまい羞恥心をひどく感じる。ストッキングまで滲みているであろう自分の愛液を恥じる。また、成宮が見つけてしまうのだろうか。
 成宮をそっと見ると、デニムの上からでも股間が隆起しているのが分かる。興奮している。それが更に自分の興奮にもなっていく。不思議だった。
 その視線を感じてか、成宮は笑う。それから、優しくこう言った。
「もちろん、僕も興奮しますよ、だって僕は貴女のこの姿が見たかったんですから。夢のようです、一週間想像し尽くした貴女がここにいるのですから」
 その言葉でまた、じわりと何かが漏れていく。恥ずかしい。もう見られたくない。でも自分では、この縄をどうすることも出来ない。焦りがまた、いずみの心を濡らしていく。
「今日はこちらも堪能させてもらいましょう。幾度も想像した、いずみさんの中身を」
 中身、と言うのがなんのことか、が分かって期待は最高潮になる。ああ、やはり見られてしまう。そこを触られたら、私は……しかも縛られて自由も利かないこの身体では、拒否できないのだ。
「どんな気分ですか、僕に縛られて。嫌では無いんです?」
「動けないことが、こんなにドキドキするなんて。魔法にでもかかったみたい、です」
 はあ、と成宮はため息をつく。何か、私は間違ったことを言ってしまったのだろうか。
「いずみさんは、本当に素質があるようだ。とても楽しみです。今の段階でそんなに期待しているということは、今後、も……」
 今後、とはなんのことだろう。そう考えていると成宮は、セーターの裾をそっと捲った。
「縛られる楽しみを教えていきたいです。もっと、もっと快感を引き出したい」
「あ……」
 きっと下半身を触られるだろうと思っていたのに、捲られて下に付けているペチコートが露出し戸惑いを隠せない。白いレースがふるふると震える。そのくらい、緊張で鼓動は最大になっていた。
「やっと見れますね。可愛いいずみさんのここ……ああ、やはりピンク色だ」
 そのペチコートのレースをそっと撫でていたかと思うと、ぐい、と引っ張られて乳房を外気に晒される。ぷるんと揺れた先端が、そのまま成宮の口腔に包まれていく。
「ううっ……」
 予期しない快感に身体を捩りたくてもできない。しかも、成宮は自分の身体の上にのしかかってきていて。足を閉じることも出来なかった。熱く濡れた下半身に、成宮の猛った場所が押しつけられていく。ちゅっ、と吸われた音がする。途端に足がビクンと揺れた。でも縄で縛られているためか、動きを全て縄が吸収し、制限をかけている。きつくは無い縄の感触。じわり、とその縄から漏れ出るような、ピンク色の快感があった。
「ああ、すごくいい……やはりこれだけ行動を制限すると、貴女の魅力は増していくばかりですね」
 その上ずった声を聞くと、クールな成宮が興奮しているのが分かる。それが嬉しい。自分だけでは無かったのだと、今さら認識できる。
「あん、あっ……」
「ほら、もうこんなに立ち上がって。舌で容易に転がせますよ」
 くるくると旋回する舌を見ると、子宮が収縮するのが分かる。びくびくと腰が揺れて、膣でも感じたいと訴えているように感じる。じゅっ、じゅっ、と唾液を絡めた音が連続してくると仰け反りながら、震えた。
「ああ~っ……」
 自分でそうしようとも思っていないのに、成宮の腰に自分の腰を押しつけてしまっている。これでは、まるでお強請りする恋人のようだ。違う。私とこの男は、決して恋人では無い、のに……
「そんなに擦り付けて。はしたないですよ、いずみさん」
 はしたない、といわれてドキリとする。でも私は最初から、この男に恥ずかしい事を要求しているのだ。なのに、言葉で追い詰めてくる成宮が憎く感じる。
「でもっ、でもっ……どうしようも、出来なくて……」
「ああ……そうですね、いいんですよ。こんなに感じてしまっては、そうするしか無いですよね?腰が動いて、膣に欲しいと懇願しているようだ」
 こんなにはっきりと、卑猥な事をいう成宮に多少驚く。前回までは、とても紳士的な言葉を並べてくれていた。でも、今回は、違う。徐々にレベルを上げてきている。成宮の本来の性癖へと、私は誘われているのかも知れない。今までとは全く違う種類の快感。身体だけではない、もっと心の奥底で快感を求めていく、女の本能を呼び起こさせている、そんな気がする。
「入れたいでしょうね……膣に」
「は、はいっ、ああ、つら……い、です」
「でも入れませんよ、貴女が本当に、心の底から僕を求めるまでは。それまでは、彼氏にしてもらいなさい」
 私の心の中を覗きながら、この人はこんなことを言っているのだ。私が入れたくて我慢が出来無いのを知っている。奥まで入れて欲しいのを知っている。悔しいけれど、成宮に懇願することしかできない。そう、私は縛られているのだ。身体を捩ってしまい少しだけ、手首に食い込む縄。痛くて、窮屈で。でも、自分ではどうしようも出来ないことが、成宮への願いへと変換されていく。
「お……ねがいっ、しますっ、ああ……このまま、胸でいってしまうのは……」
「もっともっと、大きい快感が欲しいですか」
 縛られて、自由の利かない中、圧倒的な支配の力を誇示して彼は言う。私の前髪を撫でる指。乳首を甘く噛むその唇。全てを欲している。私は、成宮を欲している。
「欲しいです、ほしいっ……」
「どうしたいですか?貴女は自由が利かないんですから。僕がしてあげますよ、何でも」
「膣に、膣に……欲しいっ」
「それはだめです。もう一つ、とても気持ちよくなる場所があるじゃ無いですか」
 ちゅ、と私の唇に唇を重ねて言う成宮は、明らかに興奮していた。顔が紅潮し、いつもの優しい成宮では無い。少しだけ、冷酷な、冷ややかな彼が垣間見える。息も荒い。私の回答を待つ間、彼は足首に嵌まっている縄を撫でる。その刺激でさえ、感じてしまいじっとりと濡れてくるのが分かった。
「あ……あの……ストッキングを、取って……下さい」
「貴女は縛られているんですよ。取ることはできません。どうしても、と言うのなら、破きますがいいですか」
「はいっ……」
「素直で可愛いですね。それでは、破きましょう」
 鼠径の部分に指が来たと思うと、その薄い場所に成宮の爪が食い込む。ビッ、ビッ、と強く破る音がホテルの静寂に響く。すると自分のきっと、濡れに濡れているであろう下着が露出した。
「おや、これは……いずみさん、どうしたんです、まだ僕は何もしていないのに」
 ぎくり、と心が反応する。これ以上詰られたら、達してしまいそうだった。はあ、はあ、と自分の吐息の音。きっともうびしょびしょであろう自分のその場所。でも、縛られていることで、自分からは成宮の顔、そして両膝しか見ることが出来ない。