lesson4:縄酔い(6)
「……目の前に、ありますよ。さあ、いずみさん」
欲情の籠もった声。成宮が、あの成宮が興奮している。それだけで私は濡れていくのがわかる。いや、もうすでにびしょ濡れなのだが、じわりと奥から漏れ出る感覚がすさまじい。と同時に、成宮のそれから熱を感じる。そっと、口を開けてみた。
ゆっくりと、差し出されていくそれ。舌を絡めて、私はそれを味わう。とうとう、成宮のそれを口に含んでしまった。いつかはそうする時が来るだろうと、そう思っていたのだが、こんなにも興奮するものか。塩味と、それからおそらく先から漏れ出ている液体を味わう。なんとも言えない幸福感が襲ってくる。男のそれを口に含んで、私はこんなにも興奮したことがあるだろうか。
「ああ……いいです、とてもいい……」
手が使えないのがもどかしいが、自分の身体が上手く動けないことも快感の一つになっている。唇と舌だけで、彼のそれを上下していく……じゅっ、じゅぶっ、という音さえも嬉しくて、身体は多幸感に包まれていく。
「彼氏のじゃなくて、僕のを舐めているいずみさん……とても興奮します、健気で可愛い人だ。ああ……」
彼の事をだされても、最早それも背徳感と言う名のスパイスでしかない。愛おしい、こんなに男のそれを愛おしいと思った事なんてあったろうか。早く終われ、と常々思っていたはずなのに。ずっと舐めていたい。成宮が感じているのが嬉しい。
突然、舌からそれが離れていく。私が、欲しいと口を開けているのを見て、成宮は笑う。
「そんなに欲しいのですか……フェラチオがお好きなんです?」
「違い、ます……すごく舐めたいんです、あなたが感じているのが嬉しくて」
「困った方ですね。そんなに美味しそうに舐められたら僕も我慢出来なくなってきますよ」
頬に掌が触れる。そっと、キスをされて成宮の舌を味わう。跪いて、キス。胸の先を触られると、ビクン、と身体が跳ねた。
「次は、どうしますか。何が欲しいんですか」
「あ……」
口が寂しいけれど、でも中に欲しい。早く、早く……快感に駆け上がりたい。入れて欲しい。
「入れて欲しいんです……膣に。何でも、いいですから……」
「でも僕のこれを入れてしまっては、本末転倒です。いけません。それだけは」
「でも……指では無くて、それが……欲しくて」
成宮の形を舌と唇で知ってしまうと、途端にそれを入れたくなってくる。入ったらどんなにか気持ちいいだろう。早く、膣に欲しい。早く……
「こっちだったら、いいですよ」
成宮が、そう言いながら私のお尻を撫でる。まさか。まだ指しか入れたことがないのに。あんなに大きいのが入るなんて思えない。身体は恐怖で固まった。
「でも……まだ、そんな大きいのは」
弁明しようとすると、成宮はローションがありますよ、と言った。
「先だけ、入れてみましょうか。もしだめなら、セーフワードを」
ぶじゅっ、と、ローションが出された音がする。そして、グイ、と縄を引っ張られると四葉胃にさせられた。まるで見えないけれど、何をしようとしているかは分かる。案の定、そこにローションが塗りたくられていく。冷たい。でも、怖さと期待が半分半分になっていく。
「先ずは、指からです。前にほぐしたけれど、どれだけ僕の指を覚えているか……」
成宮の指を、簡単に受け入れていくそこ。私の中で、そこに入ってくるときは息を吐く、というのが常になりつつある。前回、後ろで達してしまったことを身体は覚えている。だからこそ、先に待っている快感を目指して、身体が反応していた。
「ああ……慣れてきていますよ。入っていく……ほら、僕の指、根元まで入っています」
入った指を、中で動かすのが分かる。身体が、ビクンと反応し、そこは締まっていく。
「ああっ、だめ、だめえ……」
「そんな可愛い声を出して。入れたいです。ここに……いずみさん」
どきん、どきん。
ここにアレをいれたら、私はどうなってしまうのだろう。どうしたら、いいのか分からない。膣では無くて、肛門に男のそれを入れる、という行為が一体どうなるのか、私には想像が付かなかった。
「……どうしますか」
ぎくり、と心が動くのが分かる。
私の心を、見透かされている、この人には。
ふと、縛られている縄の首筋を、グイ、と引き上げられた。一斉に、身体の全ての縄が締まっていく。
「ひっ……」
「ああ……もういってしまいそうですね。縄酔いが進んでいる」
縄が食い込んだことにより、肌の感度が上がる。そこを、じっとりと見られているのが分かる。
「ここ、欲しいみたいですよ。僕のこれ、入れて欲しいって」
「でも……でもっ」
「嫌なら、ちゃんと言わないとわかりませんよ。いずみさん、分かっているのでしょう」
「う……」
セーフワードを忘れたわけでは無い。でも、この状況では、私に分は無い。だって、こんなに快感に責められて、どう抗えというのか。
「じゃあ、二本。これで、どうなるか――ねえ、いずみさん。いかないでくださいよ。僕はね、ここに入れたくってしょうが無かったんです。いずみさんの、まだ誰も犯したことの無い、神聖な――」
そういいつつ、彼はそっと、二本に束ねた指を入れていく……
「ああああああ」
「ほら、もう、痛くないはずですよ。だって、こんなに僕の指を受け入れている……」
「ううっ、ああっ」