lesson4:縄酔い(7)
入れられて、その指の重量がすごくて絶頂へと導かれそうになる。それを、中の指の動きを止めることで、阻止する成宮が、いた。
「駄目です。いっては――駄目、いずみさん。僕のこれで、いくんですから」
完全に自分の快感をコントロールされている。いきたいのに、いけない。本当にいつ弾けても間違いないのに、全くいけないかった。
「ああっ、つらいっ……いけ、いけないっ……いきたい……」
くす、と、成宮が笑うのが分かる。
「ほら、そんなときは、どうするんでしたっけ?ちゃんと言わなきゃいけませんよね?」
私に、言わせるつもりなのだ。成宮は、私から懇願されることを望んでいる……私が、自分の肛門に入れろ、と、言わないと……アレを、入れてくれないつもりだ……
「ああ……もう、もう」
「まだいけませんよ。どうしたいんです」
「なるみや……さん、のお……」
「僕のコレ、ですか……これを、どうしろと?」
ぺちぺちと、いきり立ったそれが私の臀部に当たっている。先端が異様に大きかった、口に含んだアレを、思い出す。これからそれを入れるという……怖いけれど、このままいけないのは、辛すぎた。
「欲しいですっ、ほしい……お願い」
「ちゃんと言わないと。何を何処に欲しいのですか」
「そんな……」
絶望に似た声が私の口から漏れる。ひどい。この人は酷い人だ。
「酷い……ひどい人です、あなたは」
「そうですよ、言ったじゃあないですか……全て僕のせい。貴女は、僕に捕らわれたお姫様も同然です」
塔に捕らわれたお姫様。
そんな話を、遠い昔に母に読んでもらった事があるのを思い出す。王子様が助けに来るけれど、王子様よりも塔の悪魔が好きだった気がする。王子は来ない。私はこれから、この悪魔の手に堕ちていく……その、快感を貪るのだ。
「ほら、もっと締めてあげましょうか……」
ぎゅっと締まった縄達は、私の身体に食い込み更に感度があがる、しかし、当然絶頂は来ない。そっと、胸の先端に、指が撫でるのが分かった。
「ああ……」
「気持ちよさそうですね……僕も、いきたい。貴女の中に出したいです、出したい……」
耳許でそう囁かれて、全身が震える。ああ、もうこの人に支配されて、完全に手の中に堕ちてしまいたい。何もかも忘れて、いっそのこと、このままもう……
ふと、サン・ミッシェルのマスターの顔が浮かんだ。
駄目だ。これでは、あの小説で死んだ妻のようになってしまう。
「言って下さい、いずみさん……僕が、欲しいと」
成宮の切ない声。本当に自分を欲していることが分かって、心がずきんと痛んだ。
「入れて、入れて……下さいっ、ここに……あなたのを」
「もう一度……ちゃんと言って。さあ、何処に僕のが欲しいのか」
はあ、はあ、と成宮の荒い息づかいが聞こえる。
「私っ……の……アナルに、成宮さんのそれをっ入れて……くださ、い……」
「ああ、とうとう――言ってくれましたね、いずみさん……」
すると、一気に熱くなる。その場所が。
「あああああああっ……」
先端がズブリと入っていく。誰にも触れられたことの無い、成宮だけのその場所。そこに、彼のが入っていく。
熱く溶けるような快感と痛み。それに伴い、身体が喜びの余り痙攣しているのが分かった。
「くっ……ああ、いずみさん」
成宮の辛そうな声。私は、成宮が入れると同時に絶頂しているようだった。弾けて、跳ねて、縛られているはずの私の身体。その衝撃でワイヤーが引っ張られ、特有の金属音が聞こえている。
先端だけしか入っていない成宮は、私の肩を地面に付くように押さえつける。ビクビクと痙攣している身体に、ゆっくりと差し込んでいく……
「入れただけでいってしまったなんて……こんなこと、初めてですよ……ああ、しかも気持ちいい……中がうねって、僕を搾り取ろうと必死だ。ごめんなさい、いずみさん……」
そう謝っている成宮だが、奥まで入れ込み、腰を打ち付けている。私のそこは収縮し、膣から何かが噴き出しているように思える。しかし、それも快感でもうどうしようも出来なかった。
成宮が掴んでいる私の臀部。その指さえも愛おしい。時折、そこを拡げ、またずぶりと入れ込む。その繰り返しの度に、私は快感で身体を震わせていた。
「なにっ……?おわら、おわら……ないっ」
絶頂が終わらないことに、私は怖くなる。これではまるで、成宮に全て奪われ、完全に彼のものになってしまったように思う。酷い。こんなこと……でも気持ちが良くて何も話せない。
「ああ、可愛い、可愛い……いずみさんのアナルに……僕……出してしまう、いいですか、いずみさん」
「はい、はい……下さい、下さい……」
まるでそこが膣であるとでも言うように、私たちは確認し、そこに注ぐために懇願し、許す。
贖罪であるかのように。
いままで避妊しないことは無かった私と拓也。でも、いとも簡単に、成宮は注いでいる――私の直腸に。
中に出している成宮の動きが止まる。そこから抜かれると、私はそこに倒れ込む。今まで、緊張の連続と快感のすさまじさで、何度も気をやってしまうかと思った。でも、成宮を快感に導きたくて我慢していた。
成宮が何か言っている言葉をぼんやり聞きながら、私の意識はフェードアウトしていった。
「いずみさん……僕の、大事な人」