lesson4:縄酔い(8)
気がつくとソファーの上に私は寝ていた。目隠しは取れていて、部屋が見渡せる。
縄は外れており、毛布にくるまっている。
「あ……」
時間は何時だろう。毛布から身体を出すと、くっきりと縄の痕が、胸と手首と腹部についていた。
「起きましたか、いずみさん」
成宮はキッチンから近づいてきた。
「これ。ミルクティーですよ。さっきは、余り飲めませんでしたから」
温かい。
紅茶を飲んで、自分の喉がカラカラだったことを思い出した。
「シャワーを、浴びた方がいい。いずみさんの身体は、僕が」
成宮はそう言うと、その後を言わなかった。
そうだ。
私は、成宮の精を、受け入れてしまったのだ。
「あの、どうしたら、いいですか」
「そうですね……無理にかき出すことはしないで平気ですよ。あと、下着の上に、なにかナプキンのようなものを」
鞄に入っている緊急用のナプキンがあるのを、思い出した。
「湯船が入っています。もし良ければ、温まるといい」
「はい……」
まるで夢でも見ていたように、私はとぼとぼと浴室へ歩いて行く。
何が起きたのか、分からない位の快感だった……
膣には挿入していない、その事実が私を締め付ける。
浴室はシックで、灰色のタイルに洗練されたグッズ。センスが良いことが分かる。
シャワーを出して、髪の毛から全て、洗い流す……
「私、とうとう……」
一線を越えてしまった、という思い。分かっていたことではないか。いつか、どちらかは犯されるのだということは、最初から、分かっていた事だった……
コレを望んだのは、私。縄酔いに紛れて、自分本位のセックスをしたのは、私……
紛れもない、あれはセックスだった。
私の希望通りに、犯してくれた男――
拓也にも触れられたことの無い、私の場所に、彼のものが入っていたのだ。
そっと、後ろに指を伸ばす。そこに入れてみると、先ほどの名残のゼリーが付いている、指で少しかきだしてみると、ゼリーと共に乳白色の液体が指先に付いてくる。
「ああ……」
名残火を感じて、首を振る。どうしてこんなに好色になってしまったのだろう。
ザー、ザー、というシャワーの音に紛れて、私は泣く。
その涙は、嬉しいのか、悲しいのか、それとも怖いのか。
自分のことなのに、分からなかった。