lesson6:恋慕の代償(6)
「ああ!」
痛みで跳ねる。それを見て、成宮はにやりと笑う――まるで、映画の悪役のように冷たい顔だった。
「ご主人様、と呼びなさい……失態があったら、こうしてお仕置きをします。いいですね」
「はいっ、ご主人様……ごめんなさい」
「ふふ。可愛いですね。いいです、許してあげましょう。まあ、最も僕が下の毛を剃っていますから、彼氏はこれを見たら驚愕するでしょうけど」
ふふ、と楽しそうに笑う成宮。今まで、私が彼氏と会っても、セックスしてもいいとさえ言っていた成宮とは正反対……まるで、嫉妬の塊。感情が手に取るように分かる。成宮の奴隷になったことで、成宮が何を考えてそうしているのか、一気に感情が流れてくるようだった。
そっと、下着を取られていく……ほんの少し、生えかけのその場所は、成宮が見られるととても恥ずかしい。でも彼の表情は、恍惚のそれであった。
「ああ、とてもいい……僕が剃ったときより、ほんの少し生えて……これで彼氏がセックスなんて、到底無理でしたね。僕のものだ、ここは」
じょり、と短い陰毛を撫でる。びくんと揺れて、そのままそっと、脚を開いた。
「どうしたんですか。自分から拡げて……何をして欲しいのです」
「あっ……、触って、さわって、ほし……」
また、ピシャリと鋭い刺激。あっ、と声が漏れた。
「欲しがりはいけません。自分から求めては駄目です。今日は、初めて僕の奴隷になった貴女に教え込まなくてはいけませんね」
冷たい成宮の表情にドキリとしながらも、心では期待が止まらない。どうしよう。楽しくて楽しくて、この偉大なるご主人様の言うとおりにしたら、先にはどんな快感が待っているのだろう。
骨の髄まで成宮のものになりたい。
切実にそう思っている自分がいる。
「さあ、四つ這いになりなさい。僕の飼い犬も同然ですよ、貴女は」
素直に、持っている縄を離して床に四つ這いになる。目隠しもしていない状態でこうなると、成宮の威圧感がすごい。目の前に立つこの男性は、私を犯すも殺すも、全くの自由なのだ。その強烈な力に身を任せているということ自体が、恍惚の理由となって私を支配する。楽しい。この、私のご主人様の完璧なことといったらどうだ。私を喜ばすために、何でもしてくれる。縄で結わき、吊るしあげ、お仕置きをする……こんな人が私の人生で、今までいただろうか。
「とてもいい格好です。素直で可愛い僕の犬。さあ、わん、と鳴きなさい」
「は……」
躊躇した私に、ピシャン、と臀部への衝撃が走る。
「あううっ……」
痛みと恥辱で、声をあげる。成宮の顔は見えないが、きっと喜んでいるのだろう。吐息が聞こえてくる。
「逆らうと酷いですよ、さあ」
「……わん」
「ふふ、可愛い……僕の言いなりだ。それでは大事な質問を、しなければなりませんね」
どきん、どきん。何を聞かれるのだろう。期待と不安と、それから他の感情がぐるぐると渦巻いて、興奮は最高潮だった。
「今日貴女が泣いていたのは、彼氏のせいですか」
「……は、はい」
臀部にまた、痛みが走る。今度は、二回。
「わん、と言いなさい。貴女は今、犬なんですから……ふふ」
楽しくて笑いが漏れているのだろう、成宮の興奮はおそらく最高潮だ。見えないが、勃起しているのだろうか。あの、凶悪なそれを、また口に含めたら……どんなに幸せだろう。
「わんっ……」
「こんなに色っぽい犬はそうはいませんね。股から多量によだれを垂らして……はしたない。自分が何をしているか、分かっているのですか」
「わん、わんっ……」
反射的に、犬として鳴いてしまう。すると、成宮は、おそらくスパンキングで腫れているであろう臀部を、そっと撫でる。叩かれて、撫でられて。優しい私のご主人様。愛おしくて、何でもしてしまう。ご主人様のためなら、何でも……
「上手に鳴けましたね。そうですよ、貴女はとても覚えのいい犬だ……」
「わんっ」
「お利口ですよ、可愛くて従順な貴女にご褒美をあげましょう」
ご褒美とは、なんだろう、と期待する。成宮の顔が見たくて、身を捩る。すると成宮は、また私の尻に掌を打ち付けた。
「ひいっ……」
「自分から僕を見てはいけません。僕が許可したときだけです。いいですか」
「ああ……わんっ」
「可愛いわんちゃん、ほら、これが欲しかったでしょう」
濡れに濡れたそこに、ゆっくりと成宮の指が入っていく。欲しかった。何度も成宮に入れられることを想像して、自分で慰めたその場所。長い成宮の指は、あっという間に奥へと届く。